経理に関する資格には様々な種類があります。
経理の資格を持っていることで就職・転職で選考に通りやすくなる可能性もあります。
仕事で求められる知識やスキルに応じて取りたい資格を検討しましょう。
この記事では、経理に関する代表的な資格の種類と難易度について紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
経理の資格の種類
資格は主に3つに分類されます。
- 国家資格
- 公的資格
- 民間資格
各資格の違いは、国や各省庁など、認定する団体が異なることです。
国家資格
国家資格は国が認定するため知名度が高く、難易度も高い傾向があります。
国家資格の中には独占業務といって資格を持っている人しか携わることができない業務があります。
公的資格
公的資格とは、文部科学省や経済産業省など各省庁が認定する資格です。
各省庁が認定する資格のため、国家資格と同様に社会的信用が高い特徴があります。
民間資格
民間資格とは、国家資格・公的資格以外の資格を指します。
民間資格だからといって信頼性に欠けるわけではなく、民間資格の中でもTOEICのように知名度や評価の高い資格もあります。
経理に関する国家資格3選
公認会計士や税理士には資格を持っている人しか携わることができない『独占業務』があります。
会社員として働く道以外にも、独立起業を目指すことも可能です。
公認会計士
難易度:★★★★★
合格率 |
---|
7.7% |
公認会計士は、医師や弁護士と並ぶ3大国家資格の一つです。
公認会計士には『監査業務』と呼ばれる独占業務があります。
監査業務とは、企業の財務諸表や業績について、第三者である監査人が客観的に評価し、その正確性・信頼性を検証する業務です。
求人も安定しており、平均年収も高いことから難関資格ながら非常に人気があります。
税理士
難易度:★★★★★
合格率 |
---|
19.5% |
税理士は、税理士法により定められた国家資格です。
税理士には主に『税務相談および申告業務』といった独占業務があります。
個人や法人などの顧客から税金に関する相談を受け、税金の申告や納税に関する手続きを代行することができます。
税理士試験には簿記論、財務諸表論、法人税法等の全11科目あり、このうち必須科目を含む5科目に合格することで税理士試験合格となります。
AIやRPAと呼ばれる事務作業自動化ツールの登場により、今以上に高い専門性が求められています。
ファイナンシャル・プランニング技能士(FP技能士)
難易度:★★★~★★★★
ファイナンシャル・プランニング技能検定(FP技能検定)は、日本FP(ファイナンシャル・プランナーズ)協会と金融財政事情研究会(きんざい)の2団体が実施する国家資格です。
日本FP(ファイナンシャル・プランナーズ)協会の合格率
級 | 学科の合格率 | 実技の合格率 |
---|---|---|
1級 | 日本FP協会は学科なし | 90%以上 |
2級 | 40~50% | 50~70% |
3級 | 70~80% | 70~90% |
金融財政事情研究会(きんざい)の合格率
級 | 学科の合格率 | 実技の合格率 |
---|---|---|
1級 | 6~20% | 80%以上 |
2級 | 15~30% | 20~40% |
3級 | 40~60% | 40~60% |
1~3級に分かれ、税金、保険、年金などお金に関する幅広い知識が求められます。
また、日本FP協会が実施する民間資格としてAFPとCFPがあります。
AFPは2級FP技能士、CFPは1級FP技能士と同等のレベルとされています。
国家資格と異なり、AFPとCFPには有効期限があります。
経理に関する公的資格4選
日商簿記は学生から社会人まで幅広い年齢層に人気のある資格です。
検定試験合格を履歴書に書いて評価されるのは2級以上といわれています。
求人の応募要件になっている場合もあるので、取得していると選択肢が広がります。
日商簿記検定
難易度:★★★~★★★★
級 | 合格率 |
---|---|
1級 | 10.4% |
2級 | 20.9% |
3級 | 37.3% |
日商簿記検定は、日本商工会議所が実施する公的資格です。
簿記とは、日々の営業取引や経営活動を記録・計算・整理する技術のことです。
簿記を学ぶことで経営判断に重要な貸借貸借表や損益計算書の作成スキルが身につきます。
知名度、社会的信用ともに高く、就職や転職でも評価される資格です。
建設業経理士検定試験
難易度:★★★
1級 財務諸表 | 1級 財務分析 | 1級 原価計算 | 2級 | 3級 | 4級 |
---|---|---|---|---|---|
21.0% | 30.2% | 31.9% | 44.4% | 64.3% | 79.0% |
建設業経理検定試験は、一般財団法人建設業振興基金が実施する公的資格です。
建設業における原価計算や会計学に関する知識が求められます。
求人でも建設業経理士保有者を優遇する企業は多数あります。
ビジネス会計検定試験®
難易度:★★~★★★
級 | 合格率 |
---|---|
1級 | 10.8% |
2級 | 54.2% |
3級 | 63.5% |
ビジネス会計検定は、大阪商工会議所が実施する公的資格です。
財務諸表に関する知識や分析力が問われる検定で、ビジネスパーソンのスキルアップに役立ちます。
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電子会計実務検定
難易度:★★★
合格基準 |
---|
各級とも得点の合計が70点以上 |
電子会計実務検定は、日本商工会議所が実施する公的資格です。
会計ソフトウェアを用いた仕訳入力や決算書作成など、電子会計システムを使った実務スキルを測定します。
試験施行対象会計ソフトは、弥生会計、勘定奉行、会計王、PCA会計の4つです。
電子申告や帳簿・証憑書類の電子保存など、これからの時代に求められるスキルが身につきます。
経理に関する民間資格9選
民間資格は履歴書に書いてアピールするというより、基礎力を身に付けるのに向いています。
比較的難易度も低く、実務に役立つ資格も多いので、働きながら取得するのもおすすめです。
全経簿記(簿記能力検定)
難易度:★★★~★★★★
級 | 合格率 |
---|---|
上級 | 約13% |
1級 | 約40~60% |
2級 | 約50~80% |
3級 | 約70% |
基礎 | 約70% |
簿記能力検定は、全国経理教育協会が実施する民間資格です。
企業における簿記能力・経理能力を測る検定で、上級・1級・2級・3級・基礎の級別でされています。
上級に合格すると税理士試験受験資格が与えられます。
計算実務能力検定
難易度:★★★~★★★★
級 | 合格率 |
---|---|
1級 | 49.28% |
2級 | 73.23% |
3級 | 57.57% |
計算実務能力検定は、全国経理教育協会が実施する民間資格です。
入出金伝票の計算や利息計算など帳票・商業計算の実務の能力が問われます。
一級では製造原価計算や有価証券といった実務的な商業計算が出題されます。
経理事務パスポート検定(PASS)
難易度:★★~★★★
経理事務パスポート検定(PASS)は、日本CFO協会とパソナが共同で開発した民間資格です。
経理入門から月次・年次決算、更に連結決算の概要など経理全般のスキルを包括的に学べる資格です。
合格率の情報は出ていないようです。
経理・財務スキル検定(FASS検定)
難易度:★★~★★★
レベル | 合格率 |
---|---|
レベルA | 15.9% |
レベルB | 16.1% |
レベルC | 28.8% |
レベルD | 28.0% |
レベルE | 11.2% |
経理・財務スキル検定(FASS検定)は、経済産業省から委託を受けた日本CFO協会が実施する民間資格です。
資産・決算・税務・資金に関する幅広い知識やスキルを問う資格試験です。
合否ではなくA~Eの5段階評価となっています。
消費税法能力検定
難易度:★★★~★★★★
級 | 合格率 |
---|---|
1級 | 17.07% |
2級 | 83.38% |
3級 | 49.07% |
消費税法能力検定は、全国経理教育協会が実施する民間資格です。
消費税に関する知識や実務能力を評価する試験で、1~3級の3段階に分かれています。
税理士試験や公認会計士試験よりも難易度は低いとされていますが、初めて勉強する人にはやや難易度が高いと感じるかもしれません。
所得税法能力検定
難易度:★★★~★★★★
級 | 合格率 |
---|---|
1級 | 3.30% |
2級 | 62.98% |
3級 | 86.52% |
所得税法能力検定は、全国経理教育協会が実施する民間資格です。
源泉徴収や確定申告の基本など所得税の基本的計算スキルが問われる資格試験です。
経理のスキルアップや税理士試験受験前の腕試しとしても活用されています。
法人税法能力検定
難易度:★★★
級 | 合格率 |
---|---|
1級 | 39.87% |
2級 | 26.94% |
3級 | 81.21% |
法人税法能力検定は、全国経理教育協会が実施する民間資格です。
法人税の会計処理や法令、基本原則を問われる試験で、1~3級の3段階に分かれています。
企業における税務を体系的に学べる検定試験です。
給与計算実務能力検定®
難易度:★★★
級 | 合格率 |
---|---|
1級 | 47.85% |
2級 | 69.45% |
給与計算実務能力検定は、一般社団法人実務能力開発支援協会が実施する民間資格です。
1級と2級に分かれており、更新制度がある資格試験です。
社会保険や所得税など労働法令や税法に関する正確で幅広い知識が求められます。
財務報告実務検定
難易度:★★★~★★★★
スコアにより付与される資格 | 合格率 |
---|---|
上級ディスクロージャー・プロフェッショナル | 15% |
ディスクロージャー・プロフェッショナル | 35% |
ディスクロージャー・アドミニストレーター | 50% |
財務報告実務検定試験は、一般社団法人日本IPO実務検定協会が実施する民間資格です。
上場企業の財務報告書類の作成・開示に関する知識とスキルを測る検定試験です。
経験の浅い公認会計士や企業の財務・IR担当者が受験する傾向にあります。
業界に特化した民間資格試験3選
業界に特化した資格は、取得必須ではないものの、持っていることで就職や転職に有利になる場合があります。
業界独特の取引や、基礎知識を身につけるのに役立ちます。
社会福祉法人経営実務検定試験
難易度:★★
級 | 合格率 |
---|---|
経営管理 | 67.0% |
会計1級 | 41.1% |
会計2級 | 55.0% |
会計3級 | 90.4% |
入門 | 90.5% |
社会福祉法人経営実務検定試験(旧:社会福祉会計簿記認定試験)は、公益社団法人全国経理教育協会との共催による内閣府公益事業認定試験です。
支援施設、児童福祉施設(保育園)、高齢者福祉事業といった社会福祉事業の経営・会計に携わる人のための試験です。
>>サクッとうかる社会福祉法人経営実務検定試験入門公式テキスト
銀行業務検定
難易度:★★★
級 | 合格率 |
---|---|
財務2級 | 約20% |
財務3級 | 約30% |
税務2級 | 約25% |
税務3級 | 約30% |
銀行業務検定試験は、銀行業務検定協会が実施する民間資格です。
銀行・保険・証券会社といった金融機関に勤務する人を対象にした実務・技能応用力を測る検定です。
法務・財務・税務・外国為替・証券等36種類の試験を実施しています。
農業簿記検定
難易度:★★★
級 | 合格率 |
---|---|
1級 | 24.5% |
2級 | 53.1% |
3級 | 63.0% |
農業簿記検定は、一般財団法人日本ビジネス技能検定協会が実施する民間資格です。
農業を法人化して運営する人に役立つ税務・会計・経営知識を学べる検定資格で、1~3級に分かれています。
個別原価計算や製造間接費など実務的な内容が盛り込まれています。
外資系企業や海外で活躍できる資格6選
外資系企業や国際税務に携わりたい人は取得しておくと就職や転職に有利に働きます。
英会話もできるとさらに活躍の場が広がりますが、読み書きができるだけでも十分に活躍できます。
USCPA(米国公認会計士)
難易度:★★★★~★★★★★
科目名 | 合格率 |
---|---|
FAR(財務会計) | 49.98% |
BEC(企業経営環境・経営概念) | 65.56% |
REG(諸法規) | 62.29% |
AUD(監査および諸手続き) | 52.84% |
USCPA(米国公認会計士)は、米国各州が認定する公認会計士資格です。
USCPAは『U.S. Certified Public Accountant』の略称です。
USCPAは、アメリカ以外にもオーストラリア、ニュージーランド、カナダ、香港、メキシコなど、海外でも公認会計士として活躍できる国際的な資格です。
外資系企業への転職も有利になる資格として人気があります。
試験は以下の4科目に分かれており、科目合格制度があります。
- FAR:Financial Accounting & Reporting(財務会計)
- BEC:Business Environment & Concepts(企業経営環境・経営概念)
- REG:Regulation(諸法規)
- AUD:Auditing & Attestation(監査および諸手続き)
受験には受験資格が必要です。
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EA(米国税理士)
難易度:★★★★~★★★★★
Part1 | Part2 | Part3 |
---|---|---|
55% | 63% | 74% |
EA(米国税理士)は、米国の内国歳入庁(IRS)が認定する米国の国家資格です。
EAは『Enrolled Agent』の略称です。
米国内で税務業務を行えるのはもちろん、国際税務や経営コンサルティング業界への転職にも有利になる資格です。
日米の税法を身につけることで、英語力と税務知識の証明にもなります。
試験は以下の3科目に分かれており、科目合格制度があります。
- Part 1:Individuals(連邦個人所得税法および連邦贈与税法・相続税法)
- Part 2:Businesses(事業関連の連邦税法)
- Part 3:Representation, Practices and Procedures(税務代理業務および諸手続き)
学歴や国籍等の制限はなく、18歳以上であれば受験できます。
USCMA(米国公認管理会計士)
難易度:★★★★~★★★★★
Part1 | Part2 |
---|---|
40% | 50% |
USCMA(米国公認管理会計士)は、IMA(Institute of management Accountants)管理会計士協会が主催する国際資格です。
USCMAは『US Certified Management Accountant』の略称です。
試験内容は管理会計に関するもので、財務諸表の分析や意思決定分析など、経営コンサルタントに役立つ内容が含まれています。
試験は以下の2科目に分かれており、科目合格制度があります。
- Part1:Financial Planning, Performance and analytics (財務計画、業績管理と分析)
- Part2:Strategic Financial Management (戦略的財務管理)
受験には4年制大学卒業の学位が必要です。(学部不問)
USCPAと違って独占業務はありません。
IFRS検定(国際会計基準検定)試験
難易度:★★~★★★★
合格率 |
---|
50~80% |
IFRS検定(国際会計基準検定)は、ICAEW (イングランド・ウェールズ勅許会計士協会)が主催する国際資格です。
IFRSは『Intermational Financial Reporting Standards Certificate』の略称です。
IFRS検定は国際会計基準に関する知識を測るための試験で、英語で財務諸表を作成する力が求められます。
試験内容は多岐にわたります。
IFRS検定(国際会計基準検定)試験の出題内容
- 財務報告に関する概念フレームワーク
- IAS1:財務諸表の表示
- IAS2:棚卸資産
- IAS7:キャッシュ・フロー計算書
- IAS8:会計方針、会計上の見積の変更及び誤謬
- IAS10:後発事象
- IAS12:法人所得税
- IAS16:有形固定資産
- IAS19:従業員給付
- IAS20:政府補助金の会計処理及び政府援助の開示
- IAS21:外国為替レート変動の影響
- IAS23:借入コスト
- IAS24:関連当事者についての開示
- IAS26:退職給付制度の会計及び報告
- IAS27:個別財務諸表
- IAS28:関連会社及び共同支配企業に対する投資
- IAS29:超インフレ経済下における財務報告
- IAS32:金融商品
- IAS33:1株当たり利益
- IAS34:期中財務報告
- IAS36:資産の減損
- IAS37:引当金、偶発負債及び偶発資産
- IAS38:無形資産
- IAS40:投資不動産
- IAS41:農業
- IFRS1:国際財務報告基準の初度適用
- IFRS2:株式に基づく報酬
- IFRS3:企業結合
- IFRS4:保険契約
- IFRS5:売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業
- IFRS6:鉱物資源の探査及び評価
- IFRS7:金融商品
- IFRS8:事業セグメント
- IFRS9:金融商品
- IFRS10:連結財務諸表
- IFRS11:共同支配の取決め
- IFRS12:他の企業への関与の開示
- IFRS13:公正価値測定
- IFRS15:顧客との契約から生じる収益
- IFRS16:リース
IFRS検定は、国際的なビジネスに携わる上では非常に重要な能力です。
上場企業や海外企業と取引のある会社で働く経理職の人にとっては、必須のスキルと言えます。
CFP®資格
難易度:★★★~★★★★
金融資産運用設計 | 不動産運用設計 | ライフプランニング・リタイアメントプランニング | リスクと保険 | タックスプランニング | 相続・事業承継設計 |
---|---|---|---|---|---|
31.4% | 38.5% | 36.8% | 36.2% | 36.7% | 38.4% |
CFP®は、日本FP(ファイナンシャル・プランナーズ)協会が主催する民間資格です。
CFP®は『Certified Financial Planner』の略称です。
世界で認められた共通水準のファイナンシャル・プランニングを提案する能力が問われる試験です。
試験は以下の6課目。
6課目すべての課目に合格しなければなりませんが、1課目ずつの受験および合格が認められています。
- 金融資産運用設計
- 不動産運用設計
- ライフプランニング・リタイアメントプランニング
- リスクと保険
- タックスプランニング
- 相続・事業承継設計
受験には協会が認定するAFP認定者であることが必要です。
CIA®(公認内部監査人)
難易度:★★★★~★★★★★
合格率 |
---|
10~15% |
CIA®(公認内部監査人)は、日本内部監査協会(IIA-Japan)が主催する国際資格です。
CIA®は『Certified International Auditor』の略称です。
CIA®は、不正の摘発や未然防止の他にも、経営陣に対する業務効率化の提案といったコンサルタント的な役割も担っています。
- Part1:内部監査に不可欠な要素
- Part2:内部監査の実務
- Part3:内部監査のためのビジネス知識
受験には実務経験や学歴の受験資格を満たす必要があります。
無料説明会はこちら>>アビタスのCIAコース
おわりに
東京商工会議所が主催するBATIC(国際会計検定)®は、2022年11月28日で終了しました。
この検定は日商簿記検定の英語版で、英語と簿記を同時に学べることから、日商簿記2級取得者のさらなるキャリアアップ試験として位置づけられていました。
2023年現在でも、『BATIC保有者歓迎』という求人が数件見られます。
過去に取得した人も、英語で会計を扱える能力は今後ますます重要になると思われます。
ただ、自分が頑張って勉強した検定がなくなるのは、結構ショックですよね…。
気軽にどうぞ♪